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新幹線を捨て鈍行に揺られる。強風と土産袋の新潟日帰り往復。 2026.04.04 |
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新幹線に乗る人は時間を金で買っているが、自分は違う。移動すること自体が目的であり、目的地で遊ぶことなんて二の次なのだ。いわば「ただ電車に揺られたい人」による、新潟日帰り強行軍の記録である。
高崎駅のホーム。これから数時間、ずっと座席に座り続けることになる。世間では国鉄上越線の旅といえば、向かい合わせの「ボックスシート」を想像する人が多いが、高崎から水上の間にはそんな甘いものはない。待っているのは、都会の電車と同じ、横に長ーいロングシートだ。向かいの人と気まずく目を合わせながら、ただひたすらにレールの音を聞く走る待合室である。 水上駅でようやく列車を乗り継ぐ。ここからはボックスシートが現れ、やっと旅をしている気分になれる。長いトンネルを抜け、越後湯沢へ。駅の中は観光客でいっぱいだが、自分の目的は観光ではない。もっと移動を楽しもうと湯沢高原ロープウェイに乗るつもりだったが、目に入ったのは「強風のためお休み」の文字。自然には勝てない。山の上に行く楽しみはなくなったが、これもまた旅の面白さだ。 |
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当初は越後湯沢までの予定だったが、駅の掲示板を見ているうちに「行けるところまで行ってみるか」という精神が湧き上がってきた。その場で六日町行きを決める。この予定に縛られない無計画な移動こそが、移動中毒者の本領発揮である。
あまりに手持ち無沙汰なので、駅の売店でお土産を買った。だがこれが失敗だった。ずっしりと重い土産袋は移動中ずっと邪魔で仕方ない。座席で袋が倒れないように、周りの人の迷惑にならないように、常に気を遣う苦行が始まった。移動を楽しみたいのに、荷物のせいで自由がなくなる。これこそ、移動好きがやってしまう最大のミスだ。 六日町へ向かうところで、ついに北越急行の車両がやってきた。待ちに待ったボックスシートの車両だ。しかし、現実は甘くない。車内は雪景色を見に来た観光客でぎっしり。目の前にあこがれのボックスシートがあるのに、座れない。結局、自分は重い土産袋を抱えたまま、ドアの横で踏ん張ることになった。座れない移動ほど、体力を使うものはない。 |
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六日町で降りても、観光スポットには目もくれない。駅の空気を吸い、ほんの少し過ごしただけで、すぐに折り返しの電車に乗る。帰りの車窓は、いつの間にか真っ暗だ。何も見ていない。手元にあるのは、相変わらず邪魔な土産袋と、立ちっぱなしで疲れた足だけだ。唯一手に入れたものといえば、この移動を妨害してくる重い土産袋くらいだろう。
高崎まで戻り、さらに乗り継いで都心へ向かう。最後は国電京浜線に揺られて家路につく。延々と続く線路。都会の明かりが見えてきても、頭の中にはまだ電車のモーター音が響いている。 何が楽しかったの?と聞かれれば、自分は迷わずこう答える。「ずっと動いていた。それだけで十分だ」と。 国鉄を乗り倒し、観光はせず、強風に邪魔され、満員のボックスシートを恨めしく眺めながら、それでも自分は移動し続けた。この無意味な往復こそが、最高の贅沢なのだ。 |